サラリーマンが起業する前に知っておきたいお金【年金・健康保険・退職金】

 働き方が多様化し、サラリーマンを辞めて起業を検討する方もいらっしゃるでしょう。特にフリーランス(個人事業主)は簡単に始められる分、サラリーマン時代に当たり前にあった「保障」と「信用」は自分でなんとかしなければなりません。社会保障はまず会社側が手続きしてくれていた健康保険や年金を自分で加入する必要があります。ご自身が病気や働けなくなった時にもらえる大事なお金ですので、万一に備えるため必ず加入しておく必要があります

【健康保険】国民健康保険へ加入で負担増。扶養家族のいる人は要注意。

 サラリーマンの方が給与天引きされている健康保険料は、勤務先とご自身でその費用を半々で負担しあっています。これを労使折半といいます。サラリーマンの方が入られている健康保険には「扶養」という考え方がありますので、扶養家族がいても、保険料の負担が多くなるということはありません。

 フリーランスになった場合、お住いの市区町村で国民健康保険への加入することになります。この費用は確定申告で申告し全額控除の対象とすることができますが、全額自己負担です。さらに国民健康保険には扶養という概念がありません。扶養家族がいる場合は世帯の人数分負担する均等割という部分がありますので、負担金額が大幅に増えます。

 国民健康保険の保険料は、①医療分、②後期高齢者支援分、③介護分の3つの区分があります。

  • 40歳未満の方は医療分と後期高齢者支援金分
  • 40歳以上65歳未満の方は、医療分と後期高齢者支援金分と介護分の3区分
  • 65歳以上75歳未満の方は医療分と後期高齢者支援金分

を負担することになります。40歳以上65歳未満の方が一番負担は大きくなりますね。さらに、世帯加入者の所得に応じた【所得割】、世帯加入者の資産に応じた【資産割】、世帯加入者の人数に応じて計算される【均等割】、一世帯あたりで計算される【平等割】の4つの組み合わせで計算されます。

 国民健康保険の保険料は市区町村によって、組み合わせや料率が違いますので、お住いの市区町村に確認しましょう。【国民健康保険 xx区(お住いの市区町村名)】で検索すると簡易計算できるページが準備してある地域もあります。

 試しに、東京都千代田区のホームページにあるExcelで試算してみました。

【条件】

  1. 家族構成を夫43歳、妻42歳、10歳のお子さん一人
  2. 給与所得は夫が700万円、妻100万円

【結果】

年間の保険料は904,260円。月額に直すと75,355円となりました。

健康保険の負担が月7万円以上。結構な負担となりますので見過ごせないお金です。

※あくまでも試算ですので、実際はお住まいの市区町村にて算出してもらいます。

【年金】国民年金加入は必須!節税しながら老後破綻を避けるためにできる手はすべて使う!

 サラリーマンの方のもう一つの給与天引きの項目「厚生年金」も労使折半ですので、負担金額は半分で済んでいます。扶養という考え方もありますので、専業主婦(夫)の方(国民年金第3号被保険者)を扶養している場合でも追加負担はありません。さらに厚生年金に加入してると、自動的に国民年金にも加入している(国民年金第2号被保険者)ことになっています。

 フリーランスになると、年金も自分で加入しなければなりません。健康保険と同じく年金も国民年金第1号被保険者となり、自分で全額支払うことになります。こちらも扶養という概念はありませんので、20歳以上の扶養家族がいる場合はそれぞれ第1号被保険者となりますので負担金額が大幅に増えます。

 国民年金は480ヶ月支払った場合、60歳から老齢基礎年金として1年に780,900円(2021(令和3)年4月分から)受け取ることができます。とても生活できる金額ではありませんが、これが一生涯続くわけですから、100歳まで生きるとすると40年間で3000万円以上のお金をもらうことができるかもしれません。実際は、経済状況などに応じて支給額は変化しますので確定ではありませんが、長生きすればするほどお得になることには代わりはありません。

【老後破綻防止回避策1】月額400円の付加保険料で将来の年金受取額を増やす!

 厚生年金に加入し続けるサラリーマンと比べると、フリーランスは年金も少なくて老後が不安。老後の受け取り金額を増やす方法があります。国民年金第1号被保険者の方だけ、付加保険料を収めることができます。付加保険料は月400円で、お住いの市区町村役場で手続きすることができます。将来受け取る付加年金額は、年額「200円×付加保険料納付月数」で計算し、2年以上受け取ると支払った付加保険料を上回ります。

例えば、50歳から60歳までの10年間(120ヶ月)付加保険料を納めていた場合の年金額は次のとおりとなります。

【付加保険料(負担額)】400円×120月=48,000円

【付加年金額(受取額)】200円×120月=24,000円

24,000円が老齢基礎年金に上乗せされますので、2年で48,000円は取り返せるということになります。

【老後破綻回避策2】iDeCoで自分年金づくり節税しながら老後破綻を回避

 フリーランスの方は国民年金しかないので、自分で厚生年金に当たる部分を準備しなければなりません。付加保険料に加えて、さらにiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入をすることで補います。

 国民年金第一号被保険者の方は、月6.8万円、年間81.6万円を限度に掛金を拠出(積み立てる)ことができます。企業年金なしの厚生年金の方が月2.3万円までですから、厚生年金がない分、多めに拠出することができます。

 付加保険料を支払っている方はその分限度額は月1000円減り、6.7万円となります。受け取る時のことを考えると、付加保険料は終身、iDeCoはその時点での資産の合計金額が限度額になりますので、付加保険料を優先させます。

【退職金】小規模企業共済加入で自分で準備できる

 さらに、サラリーマンの方と違って仕事を畳むことになっても退職金はありません。そのために、小規模企業共済へ加入し退職金を準備することが可能です。小規模企業共済は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構によって運営されている制度で、小規模(従業員20名以下)企業の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てることのできるお金です。さらに事業資金等のお金の貸付にも対応できます。コロナウイルス感染症による緊急事態宣言発令時には『特例緊急経営安定貸付け』が出ましたので、運転資金を準備できたという経営者の方もいらっしゃいました。何かあったときのためにも、入っておきたい制度です。

確定申告で社会保険料や小規模企業共済等掛金【控除】する

 国民健康保険、国民年金は社会保険料として、iDeCoや小規模企業共済は小規模企業共済等掛金として、所得から控除を受けることができます。確定申告も自分でしなければなりませんが、こういった所得控除をきちんと入れて申告することによって税金が適正な金額、支払い過ぎにならなくなりますので、確定申告の際には忘れずに入れましょう。

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